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シネスコと向き合う時がきた

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シネスコと向き合う時がきた

映画を見てるとたまに上下に黒い帯が入る時がありますよね。
あれは業界的には「シネスコ」と呼ばれるものです。
動画編集であえてシネスコを入れる際には、専用のpng画像やカラーマットを使用して、上下をトリミングする形で使用します。

せっかく撮影した素材をなぜわざわざトリミングするかというと、「映画っぽいから」としか言えません。シネマルックを目指した作品を作成する場合はとりわけシネスコを入れることが多いのですが、やはりシネスコを入れると映画っぽい雰囲気ができます。

しかしシネスコの起源から考えていくと、昨今の動画編集界隈でのシネスコの使い方は少しズレてると言えます。その辺を少しだけ考えていきます。

シネスコの起源(めちゃくちゃ説明なので飛ばしてもヨシ)

そもそもシネスコとはなんなのか、なぜシネマルックといえばシネスコなのかというところを簡単に紹介します。

シネスコは「シネマスコープ」の略です。これはもともと2.35:1のアス比の映画の上映フォーマットの名前です。

それまで映画のアス比といえば一般的なのは1.33:1(スタンダードサイズと呼ぶ)でした。
昔の人は超賢いので、「画面デカくすればもっとウケるんじゃね???」と考え、スクリーンを横に大きくしたのがシネマスコープサイズです。
当然普通のレンズで撮影された映画を横長のスクリーンで上映しても比率は変わりません。
そのため、アナモルフィックレンズという専用のレンズを使用します。

アナモルフィックレンズで撮影された映像は左右がギュッと圧縮された状態になっています。
それを映写する際にもう一度アナモルフィックレンズに通すことで、圧縮された部分が引き伸ばされて通常よりも横長の映像になるというわけです。

当初の目論見通りシネマスコープはめちゃくちゃウケて、2.35:1のアス比は映画界のニュースタンダードになりました。
ただし一方で横長のスクリーンは衰退していきますので、当然、通常のスクリーンでも上映することになります。
その際は映像の左右を引き伸ばした状態で現像されたフィルムを使用するのですが、フィルムの大きさは変えられませんので、フィルムの横合わせで、上下に余白がある状態で現像します。
この画面の余白がのちに「シネスコ」と呼ばれるようになりました。

現在のシネスコ

先ほども書いたように、現在「シネスコ」と呼ばれる上下の黒帯は上映フォーマットが対応し切れないためにできた画面の余白でした。

それがメジャーになり、「シネスコがあるだけで映画っぽく見える」という逆転現象が起きてるのが現在のシネスコです。
本来は画角を広げるための発明だったのに、今となっては画角を狭める表現になってるのが皮肉ですね。(?)
起源から追って考えるとなんとも本末転倒に思えますが、しかし実際にシネスコからくる映画っぽさが潜在的なバイアスとしてあるのは事実で、別に横長のスクリーンで上映する予定はなくてもこれを利用しない手はありません。

現在もアナモルフィックレンズはありますし、個人で買おうと思えば買えるものになってます。

しかしよりお手軽にシネスコの効果を利用したいときには、最初にも書いたように編集の段階であえて上下に黒帯を入れることになります。
ただここで注意したいのが、アナモルフィックレンズで撮影した映像は独特のレンズフレア(上の画像のように横に伸びる)があったり、通常よりも横長のサイズになっているということです。
つまり、普通のレンズで撮影して後からシネスコを足した映像とは見え方が異なります。そのため、そういった映像をその辺に目敏い人が見ればすぐに編集の段階でつけられたシネスコを見破れます。

当然ですが、たとえ編集の段階でシネスコを入れるとしても、少なくともそのことを留意して撮影する必要があります。
例えばカメラマンが画面の上下になにか重要な被写体を映り込ませてる場合、そこにシネスコを入れると隠れちゃいますよね?
シネスコを入れることを前提として、画面上にシネスコのガイドを表示させて撮影するのが望ましいです。

シネスコの利点

シネスコを入れる利点として、シネマルックの演出があります。
シネスコが入る前提で撮影すれば、通常のアス比で撮影するときと比べてカメラを引いた状態で被写体を画角に収める必要がありますので、横に広がって写ります。通常より広い画角で撮影できます。(厳密には広くなってませんが……。)
そうでなくても、映像を綺麗に撮るとか、レンズ選びに気を付けるとか、カラーグレーディングとか、直接的に映像の質を左右する操作じゃなく、単純に上下に黒帯が入ってるだけでも不思議といい映像に見えてきます。

それ以外にも、上下をトリミングするので不要な部分を消せるということもあります。
あまり表現に忠実な演出ではありませんが、例えば「広いけど天井が低い屋内」の映像はシネスコを入れると効果的です。なんせ天井と床が写りにくくなるので。

さいごに

シネスコね、僕がいうまでもなくめちゃくちゃ使われてる表現ですので、気兼ねなく使っていきたいですね。

しかし、画面の上下を切ってるのでそこにはリスクもあります。切らない方が良かったり、窮屈に見えたりする場合もあるので、TPOと個人のセンスで判断して、用法用量を守って正しくお使いください。

(ちなみに僕は普段から持ち歩いてるUSBメモリにシネスコのpng画像が入ってます。大好きかい!)

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