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衣装の”汚し”問題

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衣装の”汚し”問題

衣装の汚れって描くと、弁当こぼしちゃったとかで衣装が汚れるパターンを想像しちゃうのは職業病ですかね?

最近ネットでも話題になってたのを見かけたのですが、これから公開予定のとある漫画原作の実写映画の衣装が新品当然でリアリティがないと指摘されていました。
特にこの原作が明治末期の北海道を舞台にしていて、狩猟やバトルをするような作品なので尚更衣装がピカピカなのが違和感の原因でしょうね。

……もはや作品名を伏せてる意味もない気がしますが、とりあえず今回は映画の登場する衣装の「汚し」という加工について書いていこうかと思います。

” 汚し”とは

映画に登場する衣装はシチュエーションによって”汚し”が必要になります。
そりゃ地面転がったりした後で服が汚れてないのは不自然ちゃ不自然ですからね。

この"汚し"という作業はその名の通り服を意図的に汚れたような色をつけたり傷をつけたりする加工のことです。

方法は色々あります。
①コーヒーや紅茶といった茶色い色のついた飲み物を服に染み込ませて乾かす
②スプレーの塗料でランダムに着色する
③地面や車のタイヤなどに擦り付ける
etc……

①は自然なヨレ感もつきながら、ちょっとくすんだ色になるのがいいですね。長年着古してる見窄らしい衣装や、ドブ川みたいなところに入った後の衣装を再現するのに良い方法だと思います。
ただ、当然飲み物の臭いは染み込みますし、洗濯すると全部落ちます。これだけに限らず汚しの衣装は洗濯すると消える場合が多いので、基本的にはデリケートに扱う場合が多いです。
飲み物を使わずに、水性塗料を溶かした水を染み込ませることもあります。

②は汚れ感を狙って再現できるのがいいですね。はっきりと色がつくので決定的な擦れを演出したり、全体的にふわっとスプレーをかけてあげれば茶ばんだり黄ばんだりうすら汚れてる感じも出せます。
ただスプレーでの塗装って、簡単なようで実はちょっとだけ難しいんです。そういう意味ではこの中では一番技術がいる汚し方かもしれません。
乾燥必須になるので時間がかかるのと、塗料を使ってる手前、肌に悪かったり臭いがキツくなるので、役者さんによっては気をつけた方がいい方法です。

③はパワーです。衣装を汚したいなら、本当に汚せばいいじゃん的な。
自然な汚れを再現できる(なんせ本当に汚れてる)のと、一番手軽なのが利点ですね。
タイヤに擦ると煤汚れのような黒い色が出ます。
まぁ自分できるならともかく、役者さんに着てもらうとなると少し抵抗がある方法ではありますね。

シーン戻りに注意

一度汚した衣装を新品当然に戻すのはリスキーです。洗濯すれば落ちる、と思ってても落ちなかったり、逆に全部落とすつもりじゃなくても新品当然になっちゃったりします。

が、映画の撮影というものは往々にしてシーンの順番通りに撮影するわけではありません。初日から最後の方のシーンから撮ったりするわけです。
そのため、先に衣装が汚れるシーンを撮った後に、その衣装が無事だった頃のシーンを撮る、なんてことも平気であります。

これに対応するために、汚す用の衣装と汚さない用の衣装(『番手』と呼ぶこともある)で、同じ衣装を複数用意します。

汚れた後シーンは汚した衣装を着て、それより前のシーンは番手の衣装を着ます。

最後に

映画やドラマってストーリーばかりに目が行きがちですが、衣装にもいろんな人のこだわりがあるので、そういうところを見ても楽しいかと思います。

例の実写版映画がどういう意図でピカピカの衣装を使ってるのかは不明ですが、こういった細かい部分で見てもいない作品を非難するのは揚げ足取りだと思います。
当然作品の質は衣装だけで決まるわけではありません。実際見てみたらきっと案外楽しい映画のはずです。もしかしたらピカピカの衣装すら好印象になり得るかもしれません。

……で、上の画像は作品名をAI画像生成ツールのプロンプトを例の実写化映画の作品名にしたら出てきました。めっちゃうまそう。AIに胃袋を掴まれました。
でもこれもしかして刺し???

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